論破
使えるロジックシリーズ
今回は、2016年からABC朝日放送テレビで放送されたバラエティ番組 ハッキリ5〜そんなに好かれていない5人が世界を救う〜 から紹介。
論破 ハッキリ5 「似てない。けど、めっちゃでかい」
題材:女優の披露するモノマネにどう対応するか
番組内でのワンシーン。左手が尼神インターの誠子(セイコ)。右手が小籔(コヤブ)。
『ハッキリ5』(C)ABC朝日放送テレビ
番組のコーナー「ハッキリ法制定」でセイコが提案した法案は「女優の披露するクレヨンしんちゃんのモノマネ禁止法」である。
題材としたのは、とある番組で有村架純が披露したモノマネについて。そのモノマネのクオリティは、セイコ評価では0点レベル。しかし、周囲の演者は一同揃って「かわいい!」と評価する。
この状況に対しセイコは、「モノマネって可愛いとかじゃないから」と一蹴し、モノマネの評価基準はあくまで「似てる」「面白い」であるべきだと主張。この主張に対し、「モノマネのクオリティはあまり関係ないんじゃ」等といったセイコの主張を否定する意見が飛び交うなか、コヤブは…

とセイコの意見を認め同調した。主張が認められ嬉しくなったセイコは、コヤブに対し是非本人に言ってくださいと念押し始める。

しかし、この段階で(あるいはもっと前の段階から)コヤブはセイコの主張に潜む 可愛いもてはやされる女性に対する嫉妬心 を見抜いていたのだろう。あえて、嫉妬心が表に出てくるように意図したのか、こう切り返した。

するとセイコはすぐに首を傾げながら、

と反論。主張の裏側にある嫉妬心が見え始めた。つまり、セイコの主張は「モノマネの判断基準は似ているか・似ていないか、面白いか・面白くないか」となっているが、本音は可愛い女性が可愛いとちやほやされるのが気にくわない、そういった機会がモノマネを通して彼女達に与えられるのが納得いかない、といったところにあると推定される。
そして、「モノマネの判断基準は似ているか・似ていないか、面白いか・面白くないか」という至極当たり前な主張に納得させた上で、「じゃあ、似てないとはっきり言ってくださいね」(=そういった機会を彼女達に与えないで下さいね)といった主張を念押ししてきたわけだ。
しかし、腹内を見抜いたコヤブは「可愛い、も言う」(=そういった機会は今後もあって良いと思う)とあえて追加して反論し、それに対してセイコの「それいらないんすよ」が出てきたわけだ。
こうなると、論点はまったく変わってくる。セイコの主張は「可愛い女性に可愛いと言って欲しくない」というシンプルなものとなる。これは言論の自由を奪う発想であり、否定するのは簡単だ。
しかし、コヤブはそれをただ否定するのではなく、誰にでも分かるとても簡単な例え話を切り出した。

すると周囲は大爆笑し、「たしかに!」「それは仕方ない、それは言うわ」と一同賛同。さらにコヤブは続ける。

その後も通常ではあり得ないが、とても分かりやすい例えを話し笑いを取りつつセイコを納得させたコヤブ。
そして最後に、有村さんのモノマネ話に論点を戻し、「モノマネの判断基準は似ているか・似ていないか、面白いか・面白くないか」に賛成し、セイコの主張の裏側にある「可愛い女性に可愛いと言って欲しくない」を棄却してみせた。


相手が至極当然の主張Aをしつつ、その裏にあるAとは関係のない主張Bも暗に押し付けてきた場合、
もちろん聞き流すことはできる。しかし、それが原因であとあと揉め事になるぐらいであれば、その場で AとBが全く別物であることを相手に釘をさしておいた方が良い。コヤブの「似てる・似てないだけしか見えないことないやん」がこれに当たるだろう。
釘をさす行動は面倒で聞き流す方が楽かもしれないが… 後々で爆発するであろう爆弾を野放しにする・温めておくのは自分にとって不利益である。いつ爆発するか分からないからだ。早めに撤去するに越したことはない。
そして、相手の主張を否定する場合、真っ向から否定しにかかると相手も臨戦態勢に入りやすくなり、不要な言い争いに発展しかねない。そういったケースで使えるロジックは、コヤブが言い放った次の文言に全て入っている。
「3mの巨人が、おらはしんのすけだぞおって言ったら、似てない!でも、めっちゃでかい!て言うやろ?」
ーー小藪 /『ハッキリ5』(ABC朝日放送テレビ)
そのロジックとは、誰でも理解できるような簡単な例え話を持ち込むことである。これは一般的にアナロジー思考とも呼ばれる。
アナロジーは「類推」「類比」とも呼ばれ、特定の物事に関する情報を理解しやすくするために他の物事になぞらえることを指します。
引用:MY FUTURE CAMPUS
コヤブの素晴らしい点は、このアナロジーとして持ち出した例えば話が面白く分かりやすかった点にある。これにより、敵意むき出しであったセイコも思わず笑ってしまい、最後には笑顔で「全部納得しました」となったわけである。
相手が自分に不利益をもたらす主張をしてきた場合、かつ、その主張が間違っている・否定できる場合、
それを真っ向から否定し敵を増やすのではなく、分かりやすく可能であれば面白いアナロジーを持ち出すことで、不要な争いを避け自分の主張を通す確率をあげることができる。
それこそが、自由気ままに生きるための1つのコツと言えると思う。
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